Twitter上で怒涛のバズリからの賛否両論を巻き起こしている漫画家きくちゆうきさんの作品「100日後に死ぬワニ」について感じたことをしたためたいと思います。
ちなみにぼくは肯定でも否定でも好きでも嫌いでもなくオンタイムでも見ていませんでした。ファンでもアンチでもないです。
100日後に死ぬワニとは
2019年の12月12日に漫画家のきくちゆうきさんがTwitterで連載を始めた主人公がワニのほのぼのとした日常を描いた4コマ漫画です。
毎日19時頃に1日1話のペースで更新され「○日目」とタイトルが現実の日と同じ感覚で進んでいくので、感情移入のしやすい漫画です。
タイトルで盛大にネタバレをしているので毎日読むほどにワニくんの死が近づいていくことを実感します。
主人公が死んでしまうことが始めからわかっている作品はほかにもたくさんありますが、SNSを利用して読者と同じ感覚で時間が進んでいく仕組みは斬新でした。
商業化による反響がすごい
最終回の100日目が公開された約1時間後に「100日後に死ぬワニ 公式」というアカウトがした特報ツイートが引き金になりました。
- 書籍化決定
- 映画化決定
- グッズ販売・イベント開催
このツイートによって読者の感情が喜怒哀楽さまざまな方向に揺さぶられたと思います。
このツイートに賛否両論いろんな角度の視点や意見、考えのリプライが飛び交いました。みんなのツイートが興味深くて読んでてすごくおもしろかったです。
これだけの反響が起きる作品を最後まで連載し続けたことは素晴らしいことだと思います。
個人的に思ったこと
ここから僕の脳内キャンパスなわけですが、ワニくんマーケティングについてこの2日間いろんなこと考えました。
先に姿勢を言っておくと作品については特別な想いはありません。日常系の漫画はなにか物足りなく感じてしまうのです。
僕は斬って斬られてパワーアップして世界を平和にしてハッピーエンドみたいな漫画が好きです。あとはセトウツミも好きで泣くほど笑いました。一時期は羽生純さんにもハマってkindleで買える本は一気に全部買いました。
ぼくが100日後に死ぬワニの騒動を知って最初に感じた感情は「なんかさみしい」でした。
なぜ僕は寂しい気持ちになったのかを考えました。
僕は自分の中に生まれた「なぜ」という気持ちとその問いの「答え」を考える時間がすごく好きです。
Twitterに増え続ける賛否両論のツイートを見て、ツイートした人がどうしてそう思ったのか・感じたのかを想像して咀嚼して考えました。
さみしく感じた理由、それはこの作品には「死」があったからだと思います。
100日後には死ぬということ
「死」が根底にありそこ儚さが生まれ物語に深みを与えました。
読者はきっと毎日更新される話に一喜一憂して感情をワニくんと共有する日々を100日間過ごしたと思います。
オンタイムじゃなかったとしても話数を追っていくうちに「100日目には死ぬ」というタイトルにされた結末がワニくんへの感情移入にブーストをかけたと思います。
ワニくんは読者にとって思い入れのある命を持ったキャラクターになりました。
しかし、告知のタイミングが最終回を迎えた当日しかも1時間後に発表されてしまったことで、ワニの命の儚さが商売に利用されたような気分になってしまった。
マネタイズ
Twitterでは「お金儲けは悪じゃない」とか「結局金儲けで冷めた」とかの意見が目立ちました。
僕はクリエイターがコンテンツを育て収益化できたというのは素晴らしいことだと思っています。
情報があふれている時代で、知ってもらうために・間口を広げるために無料で公開をはじめ機を見て収益化するなんて理想的なストーリーです。
今回の件でお金儲け自体を否定している人は少数なのではと思っています。擁護派が落胆派に過剰反応しているだけで、発表のタイミングさえ間違えなければ落胆派も「金儲けで冷めた」なんて意見は今よりもっとすくなくなったと思います。
それでも世の中には無償・原価至上主義が少なからずいます。そういう人とは絶対に分かり合えないので無視推奨です。個の時代と言われはめている今、原価率にしか価値を見出せない人はちょっと…ね…。
「今まで無料で公開してくれたんだから、お金を払うのは当然だ!」
このような意見にも少し疑問を感じます。
そもそもTwitterというのはそういう場所だと思うので、無料で提供してくれたことに感謝するのはいいことだと思いますが過剰に考えすぎたり、その考えを他人に押し付けるのは違うのでは思います。
無料で公開していてもクリエイターにとっては宣伝効果や自分のスキルアップ、反応調査、モチベーションのためなど戦略や狙いがあったりするので、あまりクリエイター側の心情を考えずに素直にコンテンツを楽しむ気持ちを大事にしたほうがいいです。
ワニくんマーケティングはただただタイミングが悪かった
これに尽きると思います。
企画・案件だったとしてもそのことが別に悪いことではないと思うし、これだけ影響力のある作品にまで昇華したことは素晴らしいことです。
ただ物語に「死」があったからこそ儚さ、寂しさなどを深いレベルで感じ共有することができSNS連載という仕組みにハマった作品だったのに、結末を迎えて思い入れていた気持ちを整理する間も無く急に現実を押し付けられてしまった。
どなたかのツイートで読みましたが「遺族がなくなって喪に服す前に遺産相続の話を始められたようだ」とありましたが、とてもいい例えだなと思いました。
遺産相続の話をすることが悪いわけではありませんから。
悲しんでいる気持ちを整理する前に唐突な営業の話はまだ早かった。
背景のことは分かりませんが、誰が悪いというものではなくただ読者と提供者の空気感のずれが騒動の原因かなと思います。
もうほんの少しだけ発表を遅らせることができたら、クリエイターとファンとの距離感・空気感を大切にできたら引っ掛かりの少ないコンテンツのまま次のステージに進むことができて、マーケティングとしても伝説的な事例になったのではと思いました。
おわりに
この10日後に死ぬワニはこういった考察することも含めて1つの作品であり実験的で異色で強烈なコンテンツだったと思います。
Twitterでいろんな人の意見をみるのはすごく楽しかった。
あと、パロディで101日目があったり非公式で勝手に100日目を作って本家より先に公開したりというのもありました。
ぼくは全然アリ派です。騙して不当に収益を得ようとしたり悪意があるような内容でなければこれもSNSのひとつの楽しみ方だと思います。
SNSではこういうノイズ的なガヤみたいなものも一緒に楽しめるくらいの適度な距離感と姿勢が大事だとあらためて思いました。